〈 目次 〉
前置き
この記事は普段シングルバトルをやらないエアプ勢がインターネット大会「セイムビート」に向けて環境の考察と構築完成までの経緯を淡々と書いたものとなります。 多少の誤りには目をつむっていただけると幸いです。
セイムビートのルールについて
・ポケモン 、持ち物の重複が可能 ・使用可能:ガラル、ヨロイ、カンムリ図鑑のポケモン ※準伝説、禁止伝説、幻、ホウエン御三家 、アローラ御三家 は使用不可
簡易考察
今回自分が気になったポイントは以下の2点。
①持ち物の重複が可能 ポケモン バトルで重要になる持ち物は構築を作る上で取り合うことがよくある。 特に今作ではメガストーン、Zクリスタルが廃止されたこともあり、持ち物の取り合いが頻発しがちである。 しかしその心配が一切いらなくなるため命の珠×6、気合いの襷×6といった夢のような構築も組むことができる。
〈 影響予想 〉 ・気合いの襷+カウンターorミラーコート の増加 ・拘りスカーフG(ガラル)ヒヒダルマ 、ウオノラゴン、メタモン の増加 ・持ち物のほとんどが「珠、襷、拘り系、チョッキ、残飯、輝石」となる ・永続的に襷やスカーフを無力化できるステルスロック 、ねばねばネット の価値が上昇
②準伝説ポケモン 使用不可 現在のランクバトルでは種族値 が高い準伝説ポケモン がほとんどの構築に入っているが、それら全てがこのルールにおいては使用できない。 そのためエースバーンやミミッキュ 、ポリゴン2といった準伝説ポケモン がいる環境でも使用率の高い一般ポケモン が環境の中心となるのは間違いない。
〈 影響予想 〉 ・環境全体のパワーダウンにより受け構築が有利になる。
ポケモン の重複可能について この要素が今回の大会の醍醐味とも思えるかもしれないがそれは甘い罠である。 というのも同じポケモン ばかりにすると攻撃範囲や弱点が被ってしまい苦手な相手にはとことん勝てなくなってしまうのでなるべく様々なポケモン を使うのが良い。 (極端な例) vs
だからといって必ずしもポケモン を被らせるな!ということではない。ポケモン バトルをする上で「この技を採用していればな~」と思うことは誰もがあると思うがそういった時のために枠が空いていれば2匹目を構築に入れるのはありかもしれない。 またタイプを変えれるエースバーンや、様々な役割を担えるミミッキュ のようなポケモン は多少被っても良いとは思う。それでもせいぜい2匹までだと考えている。
これらの考察を踏まえた上で自分が導き出した結論がバタフリー +後攻の尻尾トリック である。
強いポイント1 カプコケコ、カプレヒレ がいない 準伝説ポケモン が使用できないため出した際にエレキフィールド やミストフィールド を展開される心配がなくなる。 バチンウニやガラルマタドガス がそれらの代わりを担うことができるが単体性能がそれほど高くないため当たる可能性は非常に薄い。
強いポイント2 ラムの実所持率の低下 持ち物の重複が可能という甘い罠により火力、耐久、素早さといった強化に目を向けがちになるため眠り粉の通りが良くなると予想している。
強いポイント3 安定した命中率と全抜き性能を兼ね揃えている 特性の複眼により眠り粉の命中率が97.5%まで跳ね上がるため安定して相手を眠らせることができて、攻守、そして素早さを同時に強化できる積み技を覚えるポケモン は剣盾環境内ではバタフリー しか存在しない。
この他にも基本戦術がシンプルでありながら強いこと、また過去作でバタフリーを主軸にした構築 を作っていたことから8世代のシングルバトルにあまり触れてなくても構築面、プレイング面、それぞれの経験の差を埋められると思った。
構築経緯
上記の通り「バタフリー +後攻の尻尾トリック」を主軸として構築を作ることにした。
後攻の尻尾トリック枠 安定してできるのがこの2匹だったので相手の構築に合わせて使い分けることにした。 オーロンゲ ○火力もそれなりにあるので殴ることもできる ○悪戯心により優先度+1でトリックが使える ×悪タイプ、サイコフィールド下ではトリックが使えない
ミミッキュ ○化けの皮により行動保証がある ○呪いで自主退場ができる ×相手に先に動かれるため怯み等の不安要素がある ×特性貫通系には弱い
第2の詰め筋 バタフリー が苦手なナットレイ や連続技持ちに対して強く出れる詰めポケモン としてマジックガード により宿り木の種や呪いに怯えることなく、瞑想と鉄壁で物理特殊どちらにも対応ができるランクルス を採用した。
DM(ダイマ ックス)アタッカー 4枠は決まったがこのままではバタフリー の負担があまりに多すぎること、そしてバタフリー はDMに存在しないことから残りの2枠はDM前提のアタッカーを採用してバタフリー の負担を軽減することにした。
DMアタッカーに求めることは以下の通り。
①相手を1匹以上倒せる攻撃性能 ②ダイサンダーやダイフェアリーを使わない、誘わない
このことから技範囲が広く、素の状態が炎タイプのためダイフェアリーを打ちづらいエースバーン、そしてエースバーンがどうしても勝てないパッチラゴンに強く、身代わりで粘ってくる相手への対抗策にもなり、ダイサンダーを透かせるマンムー を採用した。
この並びで回していたところ予想通り眠り粉の通りが良く、イージー ウィンを狙いやすかったので構築の軸はこれで間違いないと確信した。 しかし以下のような問題点が存在した。
1.カバルドン が苦しい 欠伸ループでかき回されたり、アッキ持ちだと突破が困難だったりと毎回苦しいゲーム展開をしていた。
2.ミミッキュ の選出率がほぼゼロ どれだけ素早さを早くしようと上からトリックが使えるオーロンゲの方が汎用性があり、ミミッキュ を選出することがなかった。
3.ミラーマッチへの回答がない
そこで役割の薄かったミミッキュ とマンムー をラムの実を持たせることで状態異常に強くなり、連続技を持つカイリュー と命の珠を持たせることでカバルドン をダイストリームで確実に倒しつつ、素早さを2倍にして後続にも圧力をかけられるガマゲロゲ に変更することでこれらの問題を解決して完成に至る。
構築
使用個体
※ H…HP A…攻撃 B…防御 C…特攻 D…特防 S…素早さ
エースバーン 特性 :リベロ 持ち物 :命の玉 性格補正:S↑ C↓努力値 :A252 D4 S252 実数値 :155-168-95-× -96-188 技構成 :火炎ボール、思念の頭突き、飛び膝蹴り、飛び跳ねる
〈 ダイアタックとダイジェットの違い 〉 エースバーンの技構成はキョダイカ キュウのベースとなる火炎ボール、攻撃力を上げられるダイナックルのベースとなる飛び膝蹴り、ドヒドイデ 絡みの構築のサイクルを崩すための思念の頭突きまでは確定。 残りの1枠は素早さ操作技が欲しいと考えており、候補となったのがダイアタックのベースとなるギガインパクト 、ダイジェットのベースとなる飛び跳ねるの2つだった。 ダイアタックで素早さを下げることで後続のバタフリー の起点作成もできるが素早さ操作はオーロンゲでも可能である。 そのためダイジェットで自身の素早さを上げて相手の2匹目以降のポケモン に対しても圧力をかけられるようにした。
カイリュー 特性 :マルチスケイル 持ち物 :ラムの実 性格補正:A↑ C↓努力値 :H68 A204 S236 実数値 :175-198 -115-× -120-130 技構成 :ダブルウィング 、スケイルショット、馬鹿力、竜の舞〈調整意図〉 H … 16n-1(砂嵐等のダメージ最小) S … S+1で準速142族抜き(ドラパルト意識)
〈 精神力とマルチスケイルの違い 〉 精神力は8世代より威嚇を無効化できるようになり、ギャラドス やウインディ のような威嚇を駆使した物理受けで止まらないのが魅力である。 初手からDMをして圧力をかけるのであればこちらの方が強いと個人的には考えている。 しかしこの構築におけるカイリュー の役割は初手DMの他にバタフリー ミラーや詰め枠がどちらも刺さらない場合の第3の選択肢でもあることから相手に合わせて臨機応変 に立ち回れるマルチスケイルを採用した。
ガマゲロゲ 特性 :すいすい 持ち物 :命の珠 性格補正:C↑ A↓努力値 :H4 C252 S252 実数値 :181-× -95-150 -95-126 技構成 :ハイドロポンプ 、大地の力、ヘドロウェーブ 、凍える風〈調整意図〉 C … 珠ダイストリームでHD極振りカバルドン を確定1発 珠ダイストリーム+珠ダイアースで無振りウオノラゴンを確定で倒せる 珠ダイストリーム+珠ダイアイスでH4振りDMカイリュー (精神力)を確定で倒せる
〈 キングドラ との違い 〉 同じく特性がすいすいのキングドラ ではなくガマゲロゲ を採用した理由は後続のバタフリー の眠り粉を通す上で厄介なダイサンダーやダイフェアリーを誘いにくい点にある。
オーロンゲ 特性 :悪戯心 持ち物 :後攻の尻尾 性格補正:B↑ C↓努力値 :H244 A4 B164 D84 S12 実数値 :201-141-116 -× -106-82 技構成 :ソウルク ラッシュ、不意打ち、トリック、挑発〈調整意図〉 HB … 陽気エースバーンの珠キョダイカ キュウ確定耐え S … S4振り60族抜き(オーロンゲミラー意識)
バタフリー 特性 :複眼 持ち物 :食べ残し 性格補正:S↑ A↓努力値 :H76 C180 S252 実数値 :145-× -70-133-100-134 技構成 :暴風、眠り粉、身代わり、蝶の舞〈調整意図〉 H … 16n+1(食べ残し4回分で身代わり1回分のHPを回復)
〈 耐久面でなく火力面に振った理由 〉 眠り粉や身代わりを駆使しながら戦うため相手から直接攻撃を受ける機会が少なく、直接攻撃を受ける可能性が高いのはロックブラストやダブルウィング といった連続技持ち、もしくはドラパルトやシャンデラ といった身代わりを貫通してくるすり抜け持ちと対面したときである。 これらのほとんどはバタフリー の弱点を突けるためいくら耐久に振ったとしても元々の種族値 が低いバタフリー で耐えるのは難しい。 またたとえ攻撃を耐えれるように調整できたとしても身代わりを多用することからその耐久調整が活きづらい。 そのため火力に振って倒せる範囲を広げた方が良いと考えた。
ランクルス 特性 :マジックガード 持ち物 :食べ残し 性格補正:B↑ A↓努力値 :H252 B204 S52 実数値 :217-×-133-145-105-57 技構成 :アシストパワー、瞑想、鉄壁、自己再生〈調整意図〉 S … S4振り35族抜き(ドヒドイデ 意識)
〈 Sに振った理由 〉ドヒドイデ に黒い霧で全能力リセットされる前にアシストパワーを打てるようにするため。
※アシストパワーで倒せるライン (仮想的:HD特化ドヒドイデ )
B±0 C+2 D+2 → 乱数1発 (割合:96.8~115.9%)
B+4 C+1 D+1 → 確定1発 (割合:103.2~122.3%)
選出パターン 及び 立ち回り
基本選出 先発: or or 後発: + or
約9割近くがこの選出パターン。
大まかな選出基準 〈先発〉 基本的には技の通りが良いポケモン なおウオノラゴン、Gヒヒダルマ が両方いる場合はガマゲロゲ を選出 〈尻尾トリック〉 オーロンゲ 〈詰め〉 バタフリー → 眠り粉の通りが良い、連続技持ちがいない ランクルス → 上記以外の場合
詰め枠の通りがどちらも悪い場合 先発: or 後発: +
立ち回り ①初手DMで相手の残数を減らす ②後攻の尻尾トリックで後続の起点を作成 ③相手を詰ませる
基本的な試合展開① 基本的な試合展開② 基本的な試合展開③
vs 気合いの襷+カウンター 先発のDMアタッカーが一匹も倒せずに倒されてしまうが、尻尾トリック枠の先制技で仕留めることで残数を同じにする。 オーロンゲが倒される瞬間にトリックを決めることで相手がDMをしていてもバタフリー の眠り粉から積んでいくことで全抜きを狙える。
襷カウンター入り① 襷カウンター入り②
vs 拘りスカーフメタモン DM技で強化したポケモン をコピーされると不利になりがちだが、トリックで確実に上を取れる状況を作り出すことでバタフリー の起点を作れる。バタフリー は常に身代わりでコピーされない、交代されてコピーされても身代わりを盾に眠り粉をばらまける状態を作れるように意識して立ち回る。 この際コピーされて連続技を打たれるときついのでなるべくカイリュー は選出しないようにする。
vs ウオノラゴン+Gヒヒダルマ 入り 先発をエースバーンにするとスカーフウオノラゴン、カイリュー だとGヒヒダルマ が出てきた場合不利となるためガマゲロゲ を先発にする。 たとえ初手でウオノラゴンと対面してもダイストリームで次のターンに上を取れる状況を作り出すことで試合を有利に進められる。
ウオノラゴン+Gヒヒダルマ入り
結果
〈インターネット大会〉 最高レート 1669 最終レート 1618
〈参加した仲間大会〉 GameWithセイムビートday1(6/11) 最終レート 1589 戦績 6勝 0敗
3rdセイムビート練習会(6/17) 最終レート 1516 戦績 3勝 2敗
反省点
この構築の主な敗因は命中不安の技が多すぎたこととTOD (タイムオーバーデス)であった。
アタッカーのエースバーンやカイリュー の攻撃技のほとんどが命中率90%以下であり、どれだけ試合展開を有利に進めたとしても10%の負け筋が残っており、その負け筋を見事に引いて逆転負けということが多々あった。
また基本戦術は一度軌道に乗せればほぼ負けることはないが最終的にはバタフリー やランクルス で詰めていくというコンセプト上展開に時間がかかりがちである。 そのため勝てる盤面でありながら時間切れで負けるということもある。 普段やっているダブルバトル ではTOD があまり発生しないということもあって時間感覚が皆無であったのも原因の一つであり、経験の差が浮き彫りとなってしまった。
あとがき
ここまで記事をご覧いただきありがとうございました。
今までにトリックやすり替えで脱出ボタン や狙いの的 を相手に押しつけてきましたが、後攻の尻尾には触れたことがありませんでした。 その原因は8世代より変更となった素早さに関する仕様にありました。 8世代から素早さが変動するたびその都度計算されて即反映されるようになりましたが、後攻の尻尾だけは影響が押しつけた次のターン以降とワンテンポ遅いため2匹を同時に動かすダブルバトル においてあまり魅力に感じませんでした。
しかしダブルバトル に比べて相手のダイジェットに対するケアが難しいシングルバトルにおいてはダイジェットの素早さ上昇を無効化して後続に繋げられるという点から評価されており、一度は使ってみたい戦法だったので今回使えたのは非常に良い経験だったと感じています。
またポケモンXD から持ってきた「困難を乗り越えた」バタフリー を使う機会ができたのは嬉しかったです。
(おまけ) 構築名の元ネタアイドルマスター ミリオンライブ「Good-Sleep,Baby♡」よりVIDEO